屏東県

屏東県は台湾南西部の最南端に位置し、台湾西部で最も南北に細長い県です。北は高雄市と接し、東は中央山脈を境に台東県と分かれ、東は太平洋(フィリピン海)、西は台湾海峡(南シナ海)、南はバシー海峡(ルソン海峡)に面しており、地理的に恵まれた場所にあります。

地理と自然環境

屏東県の面積は約2,700平方キロメートルで、地形は多様です。西部は屏東平原が広がり、地勢が平坦で、農業・漁業の中心地であり、人口が最も集中する地域です。東に向かうと丘陵や山岳地帯が広がり、中央山脈の南部に属します。その中で北大武山は最高峰で、標高3,000メートルを超え、先住民族のパイワン族にとって聖なる山とされています。

南部の恒春半島は比較的なだらかな地形で、南へ向かって急峻に下りながら海岸線へと続いており、独特の地形と気候を形成しています。また、屏東県には台湾南西部の海域に位置する離島の琉球嶼(小琉球)もあり、サンゴ礁の地形と豊かな海洋生態系で知られています。

気候特性

屏東県は全域が北回帰線の南側に位置し、高山地帯を除き、熱帯モンスーン気候に属し、年間を通じて気温の変化が少ないのが特徴です。

  • 夏季(3月下旬~11月中旬): 高温多湿で、平均最高気温は30~33℃、最低気温は24~26℃となり、降水量が多くなります。特に泰武郷の風上側は台湾全土で最も夏季の降水量が多い地域です。
  • 冬季(12月初旬~翌年3月中旬): 比較的乾燥しており、平均最高気温は24~27℃、最低気温は16~19℃です。寒波の影響は小さく、気温が急激に下がる場合でも3~4℃程度で、晴れた日には28~30℃まで上がることもあります。
  • 恒春半島の特殊な気候: 海風の影響により、夏でも極端に暑くならず、冬も極端に寒くならないため、「四季が春のよう」と形容される気候です。寒波が南下すると、恒春と屏東北部では5℃以上の気温差が生じることがあります。

産業と特産品

屏東県は農業と漁業を主要な経済産業とし、近年では観光業の発展にも力を入れています。農産物にはゴボウ、小豆、ピータン、塩漬けアヒルの卵、紅仁アヒルの卵、パイナップル、マンゴー、ハチミツナツメ、レンブ(黒真珠)、カカオ、タマネギなどがあります。特に屏東産のパイナップルと黒真珠レンブは国内外で高い評価を受けています。

漁業では、沿岸でハタ、サクラエビ、クロマグロなどが豊富に水揚げされます。特にクロマグロの漁獲量は多く、東港では「クロマグロ祭り」が開催され、多くのグルメ愛好家が訪れることで知られています。

屏東県は独特の熱帯の風景、豊富な農水産物、美しい自然景観を有し、台湾の重要な穀倉地帯および漁業の拠点であるだけでなく、観光産業の発展にも重要な役割を果たしています。恒春半島の温暖な気候、東港のクロマグロの美食、墾丁の陽光と海の景色など、屏東県は文化と自然の魅力を存分に楽しめる場所です。

続きを読む