鹿港公会堂は、台湾・彰化県鹿港鎮に位置する重要な歴史建築で、2000年7月14日に県定古跡として指定されました。この場所はかつて廈郊会館や蘇府王爺を祀る萬春宮が建っていた歴史ある場所で、それらが取り壊された後、現在の公会堂が建てられました。2010年より、この建物は鹿港芸文館へと転用され、芸術公演や地域文化の発信拠点として活用されています。
建築スタイルは、近代的要素と伝統的要素の融合が特徴です。構造は鉄筋コンクリートの梁柱構造を主体とし、屋根構造は木造と鋼トラスの混合構成で、屋根材にはセメント瓦が用いられており、当時の建築技術と材料の過渡期的特徴を表しています。外壁は洗い出し仕上げで、当時流行した建築デザインのひとつです。
意匠面では、鹿港公会堂はアール・デコ(Art Deco)の影響を強く受け、屋根には日本の伝統的な入母屋造りを採用しています。内部装飾には六角形の釉薬タイルや地元の装飾模様など、台湾の在地的要素が取り入れられており、異文化が融合した独特の美意識を感じさせます。特筆すべき点としては、公会堂の一部建材が旧萬春宮から再利用されており、歴史的記憶を継承していることです。