
「月影潭心(げつえいたんしん)」は、芸術家・王文志(ワン・ウェンジー)氏による作品で、蘭潭(ランタン)の湖面に浮かぶように設置されています。アルミ板の編み込み技法を用いて透かし模様の鳥の巣型を構築し、まるで湖水に漂うアート空間のような姿を見せます。全体のデザインは自然と都市のイメージを融合させており、「月影」は夜の湖面に映る月の美景を、「潭心」は湖の中央に広がる波紋を意味すると同時に、「談心(心を語らう)」という音の響きも重ね、訪れる人々が景色を楽しみながら語り合うゆったりとした情景を表現しています。
作品の細部には嘉義の地域文化と結びつく多くの象徴が込められています。鳥の巣の上部は桃の形をしており、嘉義の古称「桃城」に呼応しています。側面の構造はシチメンチョウの尾羽に似ており、名物の「火雞肉飯(シチメンチョウ肉飯)」を巧みに示唆しています。これは単なるアート作品ではなく、地域のアイデンティティと文化的記憶を凝縮した空間景観でもあります。
鳥の巣の内部に立つと、透かし構造から外を見渡すことができ、湖と山の景色が一望できます。それはまるで文人が高所から遠望する詩情を思わせます。晴れた日中、霧雨の中、あるいは夜の帳が下りる時、それぞれに異なる美しさが広がります。夜には照明演出により光と影が幾重にも変化し、夜の蘭潭散策に幻想的な雰囲気を添え、市内の夜間レジャーとアート観光を兼ね備えた重要なスポットとなっています。