熊本県は日本の九州地方に位置し、県庁所在地は熊本市である。かつての令制国では「肥後国」にあたり、有明海、八代海(不知火海)、東シナ海に面した自然豊かな地域である。人口は九州地方において福岡県に次ぐ第2位を誇る。
地理・地形
熊本県は九州本島の中央部に位置し、福岡、大分、宮崎、鹿児島の4県と陸地で接し、海を隔てて長崎県とも接している。東部には、世界的にも知られる阿蘇山と、その山体に広がる日本第2位の規模を誇る阿蘇カルデラがある。さらに九州山地の山々が連なり、険しい山岳地帯が広がっている。一方、西部には熊本平野が有明海に面し、八代平野や芦北地方にはリアス式海岸が見られる。不知火海(八代海)に突き出た宇土半島からは、天草諸島が連なっている。
県庁所在地の熊本市は、約70万人を抱える都市であり、その水道水のすべてを地下水でまかなっている。これは世界的にも珍しい都市構造のひとつである。
気候
熊本県の気候は、全域が太平洋側気候に属し、温暖である一方、夏と冬の気温差が大きいのが特徴である。地域ごとに異なる気候特性も見られる。
熊本地方(熊本市周辺)
熊本市の年平均気温は17.2℃。熊本平野は盆地のような地形を持つため、内陸性気候の傾向がある。夏は5月から10月まで真夏日が続くことが多く、2005年には年間106日の真夏日が記録された。高温多湿で不快指数が高く、夕方には風が止まる「肥後の夕凪」が蒸し暑さをさらに強める。梅雨期には降水量が集中し、年間降水量の約4割が6月・7月に降る。冬季の積雪は少ないが、冷え込みが厳しく、1月の冬日(日最低気温0℃未満)は平均10日を超える。
阿蘇地方
阿蘇山を中心とした山地型の気候で、九州地方の中では特に寒冷な地域とされる。冬には頻繁に雪が降り、積雪も見られる。1月の平均最低気温は−2.7℃で、寒波の際には−15℃近くまで下がることもある。一方、夏は涼しく、阿蘇山上では30℃に達することはほとんどない。降水量は多く、年間3,000mmを超える。
天草・芦北地方
海に囲まれた地域で、海洋性気候の影響を受け、年間を通じて気温の変動が穏やかである。冬でも平均最低気温は2〜5℃と比較的温暖で、降水量は年間2,000mm前後である。
球磨地方(人吉盆地)
内陸部の盆地地形である人吉盆地を中心に、寒暖差の大きい内陸性気候が見られる。夏は猛暑日があり、冬は氷点下になる日も多く、寒さが厳しい。年間降水量は約2,400mmで比較的多雨な地域である。
熊本県は、火山や山地、海、盆地といった多様な地形と、それに応じた気候の変化が豊富な県である。それぞれの地域が異なる自然環境と風土を持ち、さまざまな暮らしや文化が根付いている。