
台湾宜蘭県五結郷鎮安村に位置する「二結王公廟」(または「二結鎮安廟」)は、古公三王を祀る伝統的な信仰の廟であり、長年にわたり地域の宗教とコミュニティの結束において重要な役割を果たしてきました。1997年には、旧廟の敷地に新廟を建設する必要が生じたため、村民が一致団結して旧廟を曳いて移動させるという行動を行いました。この移転活動は、深い地域意識を示すものであると同時に、地域全体の再生計画の一環ともなりました。これにより歴史的建造物が保存され、人々の文化財への関心も高まりました。現在、二結王公廟の旧建物および王公の誕辰に行われる「過火(火渡り)」儀式は、いずれも宜蘭県の文化資産に指定されています。
かつては蘭陽渓の南北を行き来する際、ほとんどの人が二結地区を経由していたため、二結王公廟は旅人や信者にとって欠かせない信仰の拠点となり、香火(信仰)は絶えることがありませんでした。民間では「二結王公を請う-もう後がない」という諺も伝わっており、これは危機的状況に陥った際、王公の助けを請う意味を表しています。また、能力の高い人物を「まるで二結王公のようだ」と称えることもあり、その神威のイメージは人々の心に深く根付いており、地域文化の語彙の一部となっています。
五結郷内の各地域では祭礼の日程が異なりますが、二結、鎮安、上四、三興および中興の一部を含む「大二結」と呼ばれる範囲では、二結王公廟を信仰の中心とし、旧暦11月15日に合同で祭典を行います。この日は王公の誕辰でもあり、廟では「過火」儀式や、特有の民俗行事である「乩童探し」が行われます。信者たちは王公の啓示に従って、神と通じることのできる乩童を探し出します。儀式では一本の細長い銅針が乩童の両頬を貫き、これにより乩童が完全に神の意志に従っていることを示します。この間、乩童は沈黙を守り、敬虔と服従の象徴とされます。その後、隊列は廟前の広場に戻り、「過火」の儀式が行われ、信者たちは火の上で衣服を振って、災厄を祓い、平安を祈願します。