金門県(きんもんけん)は廈門湾(アモイ湾)の九竜江口に位置し、中華民国福建省に属する県で、台湾地区に含まれます。金門本島、烈嶼(れつしょ)、大胆(だいたん)、二胆(にたん)など12の島々から構成され、もともと莆田県に属していた烏坵(うきゅう)も代管しています。県庁所在地であり最大の都市は金城鎮(きんじょうちん)で、全県は3つの鎮と3つの郷を管轄しています。
金門は古くから福建同安県に属し、かつては「浯洲」(ごしゅう)、「仙洲」(せんしゅう)、「浯江」(ごこう)、「浯島」(ごとう)と呼ばれていました。歴史的に、「金がなければ銀も銅も成り立たない」(無金不成銀、無金不成銅)ということわざがあり、福建経済におけるその重要な地位を物語っています。
地理と自然環境
金門県は東経118°32′、北緯24°44′に位置し、廈門湾に面しています。中華人民共和国が実効支配する翔安区大嶝街道(しょうあんく だいとうかいどう)からわずか1.8キロメートル、台湾本島からは210キロメートル離れています。金門本島(大金門)、烈嶼(小金門)、大胆、二胆、獅嶼(ししょ)、猛虎嶼(もうこしょ)、草嶼(そうしょ)、後嶼(こうしょ)、東碇島(とうていとう)、復興嶼(ふっこうしょ)など12の島々からなり、総面積は151.656平方キロメートルです。
金門の地形は主に花崗片麻岩(かこうへんまがん)と赤土(せきど)から成り、瓊林—尚義線(けいりん—しょうぎせん)を境に、東側は花崗片麻岩が多く、西側は赤土層が中心となっています。海岸線は海水の侵食により海食崖(かいしょくがい)や海食台地(かいしょくだいち)が形成され、特に金門本島および烈嶼の北東から南東にかけて顕著に見られます。
気候の特徴
金門は亜熱帯モンスーン気候に属し、年間平均気温はおおよそ20.8°Cです。海陸の性質差と強い北東季節風(モンスーン)の影響を受け、年間を通して台湾よりも気温が低く、中華民国自由地区で連江県(れんこうけん)に次いで最も寒い県市の一つとされています。
- 冬季:乾燥して寒く、風が強いため体感温度がかなり低くなります。
- 春季:霧が多く、空気が湿っています。
- 雨季:4月から9月に集中し、年間平均降水量は1,049.4ミリメートルです。
蒸発量が多く(年間平均1,680ミリメートル超)、土壌は砂質土壌と露出した赤土が主で、水分保持力が弱いため、金門は半乾燥地域の特徴を示しています。これにより農業の発展は制約され、主に耐乾性雑穀の栽培が中心となっています。
経済と発展
かつて金門は軍事拠点として、台湾海峡防衛の最前線の役割を果たしていましたが、現在は観光と文化産業を中心とした発展モデルに転換しています。自然条件の制約により、地元の農業は耐乾性作物に依存しています。
県内には豊富な自然および文化資源があり、歴史ある金門古城、翟山坑道(てきざんこうどう)、海食台地、花崗岩地形などの自然景観は観光客に人気のスポットです。さらに、金門の特産品として有名な高粱酒(こうりょうしゅ)、貢糖(こうとう)、包丁(ほうちょう)も訪れる人々に愛されています。
金門県は戦地の歴史、独特な自然景観、多様な文化を融合させた地域であり、単なる軍事要塞としての歴史的意義にとどまらず、文化と観光の潜在力を持つエリアへと発展しています。金城古鎮(きんじょうこちん)の歴史的遺跡から、北東季節風が吹きつける壮大な海岸線に至るまで、金門は独自の風景と文化の趣を見事に表現しています。