基隆市

基隆市は中華民国台湾省の東北部に位置し、古くは「鶏籠」と呼ばれ、天然の谷湾港として知られ、台湾最北端の都市です。市の中心にある基隆港は北台湾の重要な海運拠点であり、「台湾の頭」や「台湾の北の玄関」とも称されています。基隆は降水量が多い気候のため、「雨の港」または「雨の都」としても知られ、高雄と並ぶ台湾の二大港湾都市の一つです。基隆市は7つの行政区に分かれており、人口は36万人を超えています。市域の95%が丘陵地形で、北側に面する東シナ海沿いにわずかな平地が存在し、東・西・南の三方を山に囲まれ、新北市と隣接しています。

歴史

基隆の歴史は17世紀に遡り、当時、漢民族の移民と平埔族の原住民が共に暮らしていました。スペイン人もまた、基隆の和平島を拠点として使用していました。清朝の雍正年間(1723~1735年)、漢民族の移民が大量に流入し、本格的な開墾と発展が始まりました。1875年には、基隆の航運地理的優位性と豊富な石炭資源を背景に正式に行政区が設置され、「基隆」と改名され、都市発展の道が開かれました。

日本統治時代には、基隆は台湾の交通の玄関口として計画され、大規模な港湾建設と市街地の開発が行われ、台湾で4番目に大きな都市となりました。1924年に市制が施行され、中華民国統治後は省轄市に改編されました。1990年代以降の「十大建設」により台湾の海運の中心が南部に移行し、基隆は腹地の制約や台北への近接効果により、次第に台北都市圏の衛星都市へと変貌しました。

地理

基隆市は北側が東シナ海に面しており、地形の大部分が丘陵地帯です。基隆港周辺および基隆河の両側には狭い平地が存在しますが、それ以外の地域はほとんどが山岳地帯です。このため、市内には多くの橋やトンネルが整備され、独特な都市景観を形成しています。基隆港の外周には和平島と基隆嶼があり、都市にとっての天然の防波堤となっています。

地形的には、基隆の東西にそれぞれ基隆火山群と五指山脈があり、平地は主に港沿いと基隆河の谷間に分布しています。丘陵地形は都市の発展に一定の制約を与えており、住宅地の多くは山の斜面に沿って建設されています。郊外には近代的なマンションが多く見られます。南側の獅球嶺は、基隆と台湾内陸部を結ぶ重要な交通要所です。

気候

基隆は亜熱帯モンスーン気候に属し、冬季は北東モンスーンの影響を受け、湿潤で雨が多くなります。一方、夏季は南西モンスーンが山脈を越えなければならず、降水量は比較的少なくなります。そのため、基隆は「冬の雨が多く、夏の雨が少ない」という特徴を持っています。冬季には曇りがちで雨が多く、「雨の港」と呼ばれる所以です。特に冬から春にかけては港周辺に濃霧が発生し、港湾業務に影響を与える「霧に閉ざされた雨の港」という現象が見られます。

しかし、1990年代以降、地球規模の気候変動の影響を受け、基隆の年間降水量は減少傾向にあり、一部の年には干ばつの発生も見られました。

観光と文化

基隆市は隣接する新北市の一部地域と共に「大基隆地区」を形成しており、豊富な歴史遺跡と山海に囲まれた自然環境を活かして、北台湾の重要な観光地となっています。基隆には廟口夜市や港町ならではの特色あるグルメ、新鮮な海産物があり、独自の食文化を形成し、多くの観光客を惹きつけています。

また、基隆の港湾風景や歴史遺産、例えば和平島、基隆嶼、さまざまな軍事遺跡なども観光の人気スポットとなっており、都市に豊かな歴史と文化の魅力を加えています。

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